【鼠径ヘルニアの治療費用】高額療養費制度について詳しく解説!
今回は、鼠径ヘルニアの治療に関わる費用について解説していきます。
鼠径ヘルニアの治療は、日本のどの施設でも保険診療として治療を受けることが可能です。手術や麻酔に関する保険点数が決まっており、施設によって手術費を決めることはできません。
今回は、当院で行う鼠径ヘルニアの日帰り手術の費用について、高額療養費制度という日本の医療制度と共に解説させて頂きます。
鼠径ヘルニアの手術費用について
3割負担の患者様の場合、鼠径部切開法では約5万円、腹腔鏡手術では約12万円となります。
日本では鼠径ヘルニアの術式(鼠径部切開法、または腹腔鏡手術)により手術費用が決まるため、どの施設で治療を受けられても、これらの手術費用は同じとなります(患者様の感染症の有無や重症度などにより多少の差額が生じることはあります)。
つまり、鼠径ヘルニアの術式で考えれば、「鼠径部切開法の方が腹腔鏡手術よりも経済的に負担の少ない術式である」と言えます。
腹腔鏡による鼠径ヘルニア手術数の急激な増加
一方で、日本の過去10年間を振り返ると、腹腔鏡による鼠径ヘルニア手術の数が急激に増加していることが分かります。なぜでしょうか?
これは、「鼠径部ヘルニアガイドライン」にも記載がある通り、腹腔鏡手術は鼠径部切開法と比較し、①傷口が小さい②術後の痛みが少ない③創感染が少ない④社会復帰、仕事復帰が早い⑤術後の血腫(出血)や慢性的な痛みが少ない、など「患者様にとって大きな利点がある」ことが示されているからです。
腹腔鏡手術では、特殊な器具を用いて小さな孔から手術を行うため、鼠径部切開法と比べて明らかに小さな傷で手術を行うことが可能です。また手術中は、多機能・高性能カメラで、体の組織を大きなモニター上に拡大して見ることができるため、より細かい血管や神経などを確認しながら繊細な手術を行うことができます。
これら腹腔鏡手術の特徴が、上記の患者様にとっての大きな利点に繋がっていると考えられます。一方、腹腔鏡手術を行うためには、外科医の専門的な知識や技術だけでなく、先述した高性能な腹腔鏡システム(専用カメラや大画面モニター、特殊な手術器具)を施設に設置する必要があります。これら高性能な医療機器の設置・維持には費用がかかるため、腹腔鏡手術では鼠径部切開法よりも手術費用が高く設定されています。
患者様にとって治療費は非常に重要ではありますが、やはり「ご自身の身体」以上に大切なものはありません。近年の腹腔鏡手術の増加は、腹腔鏡手術による「身体的な負担の軽減」という患者様の利点が、大きく関与していると考えられます。
高額療養度制度について
では、鼠径部切開法より高額な腹腔鏡手術の費用について、患者様の負担を軽減する方法がないのか、その質問にお答えするために、今から「高額療養費制度」という日本の医療制度について説明したいと思います。
高額療養度制度とは、「医療費による家計への負担を軽減する目的に、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度」です。
医療費の上限額は、年齢や個人・世帯収入によって変わります。では、実勢に年齢や収入によって、鼠径部切開法、腹腔鏡手術によりどの程度、自己負担額が変わるのか見ていきましょう。
69歳以下の患者様の場合
〇標準報酬月額が53万円以上の患者様の場合、3割負担額が患者様の負担となります。
〇標準報酬月額が28万~50万円の患者様の場合、鼠径部切開法は3割負担の約5万円、腹腔鏡手術では上限額の約8万円が負担額となります。
〇標準報酬月額が26万円以下の患者様の場合、鼠径部切開法は3割負担の約5万円、腹腔鏡手術では上限額の約5.7万円が負担額となります。
〇住民非課税世帯の場合は、両者とも約3.5万円が負担額となります。
70歳以上の患者様の場合
〇標準報酬月額が53万円以上の患者様の場合、3割負担額が患者様の負担となります。
〇標準報酬月額が28万~50万円の患者様の場合、鼠径部切開法は3割負担の約5万円、腹腔鏡手術では上限額の約8万円が負担額となります。
〇一般の患者様の場合、両者とも約1.8万円が負担額となります。
〇住民非課税世帯の患者様の場合は、両者とも約0.8万円が負担額となります。
このように高額療養費制度を活用することにより、多くの患者様で腹腔鏡手術と鼠径部切開法での自己負担額の差額が小さくなる(同じになる方もおられる)ことが分かります。
高額療養費制度をしっかり活用することで、経済的な負担を減らし、より患者様にとって身体に負担の少ない腹腔鏡手術を受けることができるようになります。
この点、日本の医療制度の非常に優れた一面であると言えるでしょう。
当院のホームページでは、高額療養費制度について説明しているページを設けております。動画でもわかりやすく説明しておりますので、是非ご覧ください。
とはいえ、高額療養費制度は複雑な制度であるため、文章や動画だけでは分かりにくい方も多くおられると思います。何かご不明な点がございましたら、遠慮なくクリニック受付にお問い合わせ下さい。
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