鼠径ヘルニアは男性になりやすい?その原因は?
鼠径ヘルニアって男の人がなりやすいって聞いたけど、どうしてですか?
このような質問をいただくことがあります。実際、鼠径ヘルニアの患者様のうち、約8割が男性ですので、男性の方が鼠径ヘルニアになりやすいことは事実です。
今回は、鼠径ヘルニアが男性に多い理由も含めて、鼠径ヘルニアの原因について解説していきます。
鼠径ヘルニアの発症は、小児期と老年期にピークがある
鼠径ヘルニアは、発生学的な異常により生まれてすぐに発症する先天的な鼠径ヘルニアと、高齢(多くが50歳以上)で発症する後天性の鼠径ヘルニアがあります。
これら二つの鼠径ヘルニアでは、鼠径ヘルニア発症の原因が異なります。先天性と後天性の鼠径ヘルニアについて、その発症原因についてみていきます。
先天性の鼠径ヘルニアについて
男児の場合、母親のおなかの中にいる時には精巣は胎児のおなかの中(腎臓の下)に存在しています。妊娠後期になると、精巣はおなかの中から下方へ移動していき、最終的には睾丸の中に固定されます。
精巣を栄養する精巣血管や精子を運搬する精管(これらをまとめて精索と呼びます)は、精巣の降下に伴い精巣と同じ通り道(鼠径管)を通って固定されます。
このように精巣や精索が睾丸内へ降りてくる発生の段階で、「おなかの膜(腹膜)」が一緒に鼠径管の中まで引っ張られて、腹膜が袋状の構造をとることがあります。通常、この袋は自然に閉じるのですが、開いたままの状態だとこの袋の中へ腸や脂肪などの臓器が入り込み、鼠径ヘルニアを発症します。
女児の場合は、男児のように精巣はありませんが、代わりに子宮を横から支える靭帯が鼠径管の中を通っており、男児と同じようにその靭帯が腹膜を引き連れて袋状の構造をとると、そこに臓器が入り込み鼠径ヘルニアを発症することになります。
後天性の鼠径ヘルニアについて
上記の通り、生まれつきの鼠径ヘルニアでは、発生の段階で問題が起こり鼠径ヘルニアを発症しますが、後天性の鼠径ヘルニアでは、少し機序が異なります。成人の鼠径ヘルニアでは、主に「腹壁(鼠径部)の強さ」と、「おなかの圧力(腹圧)の強さ」の均衡が崩れることが大きな原因となります。
鼠径部の強さに大きく関わるのは、鼠径部の筋肉(または筋膜)です。つまり、鼠径ヘルニアの発症には、「鼠径部の筋肉(筋膜)が弱くなること」と、「おなかの中の圧力が強くなること」の両方が関与し、鼠径ヘルニアを発症します。
鼠径部の筋肉が弱くなる最も大きな原因は、加齢です。どうしても人間は年をとると、筋肉は萎縮し、筋膜の組織自体も弱くなってしまいます。
一方、おなかの圧力が強くなってしまうのは、おなかに力を入れることが多い方(力仕事をする方や、便秘の方、よく咳をする方など)や、長時間の立ち仕事をしたりする方で、このような方はどうしても鼠径部に過剰な圧力がかかってしまい、鼠径ヘルニアを発症しやすくなります。
肥満や出産歴の多い方なども、同様の理由で鼠径ヘルニアを発症しやすくなると考えられます。
鼠径ヘルニアが男性に多い理由
加齢や腹圧の増加は、男女問わず起こりますが、なぜ成人の鼠径ヘルニアが男性で多いのでしょうか?
これには小児期に発症する鼠径ヘルニアと同じく、鼠径管構造に大きな原因があります。先述した通り、男性の場合、鼠径管の中には精巣血管や精管が走行し、これが睾丸内の精巣までつながっています。いわば、睾丸までの通り道がすでにある状態です。
一方で、女性の場合は、子宮を保持する靭帯のみが大陰唇の皮下まで続いているだけです。
男性では、もともと睾丸まで続く道筋がすでにあることで、鼠径管自体が弱くなりやすい構造であると考えられます。また、男性では女性よりも力仕事や筋肉トレーニングなどをされる割合が多く、腹圧が高くなりやすいということも原因の一つと考えられます。
いかがでしたでしょうか?
今回は鼠径ヘルニアの原因について説明しました。
男性では生涯で4人に1人、女性は30人に1人程度の割合で鼠径ヘルニアを発症すると言われてます。上述した通り、性別による解剖的な構造の違いや生活習慣が鼠径ヘルニアの発症に関わっています。
今回のブログが、鼠径ヘルニアで悩んでおられる方のために少しでもお役に立てれば幸いです。
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