鼠径ヘルニア(脱腸)を担当する診療科は何科ですか?
鼠径ヘルニア(脱腸)って何科を受診すればよいの?という質問を頂くことがあります。
「足の付け根に症状があるから、整形外科?」「いやいや泌尿器科や産婦人科でしょ?」など、症状の部位だけを考えると、いくつかの診療科が候補となってしまうため、担当診療科が分かりづらいと思います。
今回は鼠径ヘルニアを担当する診療科について、その理由を含めて解説していきます。
鼠径ヘルニアって、何科を受診すればよいの?
結論から申しますと、診療科は「外科」または「消化器外科」になります。これは、鼠経ヘルニアが、腹壁(おなかの壁)に関わる疾患であるからです。
ここでは鼠径部ヘルニア、腹壁ヘルニアについて解説していきます。
鼠径部ヘルニア
腹壁に起因する約80%が鼠径部ヘルニアとなります。
これは、おなかでも特に「足の付け根」(鼠径部)の腹壁が弱くなり、内臓が皮膚直下まで押し出されてくる病気です。鼠径部ヘルニアには下記の通り、鼠径ヘルニアと大腿ヘルニアが含まれます。
鼠径ヘルニア(内鼠径ヘルニア・外鼠径ヘルニア)
鼠径ヘルニアには、内鼠径ヘルニアと外鼠径ヘルニアがあります。
下腹壁血管(腹壁の下半分を栄養する血管)の内側で膨らみがでるものを内鼠径ヘルニア、下腹壁血管の外側で膨らみがでるものを外鼠径ヘルニアと呼びます。
外鼠径ヘルニアの穴の入り口を内鼠経輪と呼びますが、内鼠経輪からは陰嚢に向かって精管や精巣血管が走行しているため、外鼠径ヘルニアを放置したままの状態が続くと陰嚢まで大きく腫れた状態になります。
大腿ヘルニア
大腿ヘルニアとは、足に行く血管や神経(大腿血管、神経)の通り道が広がってしまい、そこから腸や脂肪が脱出する病気です。
鼠径ヘルニアと同様に膨らみや痛み、違和感などの症状が出ますが、鼠径ヘルニアよりもやや足側に膨らみを触れることが多いです。
大腿ヘルニアは主に女性に多く、嵌頓(かんとん)のリスクは鼠径ヘルニアよりも高いことが知られています。そのため、大腿ヘルニアと診断された場合は、早急に治療を行うべきとされています。
腹壁ヘルニア
腹壁の中でも、鼠径部以外の腹壁が弱くなり、膨らみなどの症状がでる病気を腹壁ヘルニアと呼びます。
腹壁ヘルニアは生まれつき腹壁に脆弱性があるために生じるものや、手術や外傷・加齢などによって後天的に生じるものがあります。
臍ヘルニア
いわゆる「でべそ」のことを言います。おへそは元々、へその緒で母体と繋がっているため、生後もおなかの筋肉に穴が開いています。
成長に伴い、このへその穴は閉じていきますが、この穴がうまくふさがらずに弱くなったままの状態でいると、臍ヘルニアという疾患になります。
白線ヘルニア
白線というのは、腹筋の真ん中で筋膜同士が癒合してできた腱膜組織を指します。この白線の一部が脆弱化しておこるヘルニアを白線ヘルニアと呼びます。
一般的には、おへそのすぐ上(上腹部)に生じることが多い疾患です。
半月状線ヘルニア
半月状線というのは、腹筋の外縁で腹横筋という筋肉が腱膜に移行する部位を指します。この半月状線が脆弱化して起こるヘルニアを半月状線ヘルニアと呼びます。
側腹部の膨らみが主な症状となります。
閉鎖孔ヘルニア
閉鎖孔というのは、骨盤に存在する座骨と恥骨により形成される孔で、閉鎖血管や神経の通り道となる孔です。この部分が脆弱化しておこるヘルニアを閉鎖孔ヘルニアと呼びます。
閉鎖孔ヘルニアは特に高齢女性に多い疾患です。
腹壁瘢痕ヘルニア
手術や外傷などの後に、皮膚は閉鎖しているものの、おなかの筋肉、筋膜の閉鎖がうまく起こらずに、腹圧をかけることで傷のある部分に膨らみや痛み、違和感を生じます。
主に、腹壁の強度を規定する筋膜が離開することで、腹壁が弱くなり発症します。
傍ストマヘルニア
ストマ(人工肛門)とは、腸の病気のため自然肛門の代わりに腹壁に造設する「排泄物を体外へ出すための人工的な肛門」のことを言います。
ストマは、腸が腹壁を貫通して、皮膚に露出しています。そのため、腸と腹壁との間が離開してしまうと、ストマ近傍の皮膚の下まで腸が押し出されてしまい、ストマ周囲に膨らみなどの症状を来します。
まとめ|鼠径ヘルニア(脱腸)を担当する診療科は何科ですか?
上記のような、おなかの壁に関わるヘルニアは全て、腹部外科を担当する「外科」または「消化器外科」が担当診療科となります。
腹部のヘルニアは治療なしでは決して治ることはありません。放置することで膨らみは大きくなりますし、嵌頓といって、腸が外に出たまま戻らず、腸閉塞や腸壊死(えし)を来すこともあります。
おなかの壁が膨らんでいることに気づいた場合は、迷わず「外科」または「消化器外科」を受診しましょう。
当院では、成人の鼠径部ヘルニア(内鼠径ヘルニア、外鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア)に対する日帰り手術を行っています。従来の鼠径部切開法だけでなく、術後の痛みが少なく日帰り手術に適した腹腔鏡手術(ヒトツキズ腹腔鏡)に精通した医師が責任を持って全ての患者さまを担当します。
腹壁ヘルニアに対しては、術後管理のため入院加療が必要と考えますので、診断がつき次第、患者さまと相談の上、然るべき入院施設を紹介させて頂きます。
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