鼠径ヘルニア(脱腸)の診断と検査方法について
足の付け根に膨らみがあるんだけど、これって本当に鼠径ヘルニアなの?病院に行ったらどんな検査をするの?と、お悩みの方へ、今回は鼠径ヘルニアの診断と検査方法について説明します。
実際の診察の流れから、どのような検査をなぜ行うかまで解説します。
鼠径ヘルニアの診断について
鼠径ヘルニアの診断方法としては、術前の問診に加え、
① 身体所見(視診、触診)
② 超音波検査
③ CT検査
④ ヘルニオグラフィー
などの検査があります。どの検査を行うかは施設によって異なります。
一般的には身体所見に加え、超音波検査、またはCT検査を行う施設が多いと思います。
当院での診察の流れ
鼠径ヘルニアの最も分かりやすい症状は、「鼠径部の膨らみ」です。
診察では、まず立った状態で、鼠径部の膨らみを確認します。「膨らみの性状」を確認するために、膨らみを触診します。立位だけで症状が出ない場合は、おなかに力を入れて頂き、膨らみを確認します。鼠径ヘルニアであれば、これで多くの患者様で診断が可能です。
一方で、鼠径ヘルニアと同じような症状であっても、鼠径ヘルニア以外の病気であることもあります。これらを鑑別するために、画像検査として超音波検査やCT検査が行われます。
当院では超音波検査を行います。ベッドに横になっていただき、鼠径部を両側、超音波で確認します。検査時間は、通常2-3分、長くても10分以内には終わります。
鼠径ヘルニアの超音波検査
超音波検査はCT検査と比較し「放射線による被爆がなく、診察室で簡便に検査できる」ことが大きな利点です。一方で、検査を行う者の習熟度により、診断精度は大きく変わります。
正常の鼠径部では、睾丸の中の精巣へとつながる精索(精管や精巣血管)という構造物を超音波検査で描出が可能です。鼠径ヘルニアの場合、精索の近傍に、腸管や脂肪などの臓器が描出されます。
これらは必ずおなかの中から続いていますので、鼠径部に入り込んでいる場所(腹壁が弱くなっている場所)を同定できれば、鼠径部ヘルニア(内鼠径ヘルニア、外鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア)の診断も可能です。
身体所見では、鼠径部ヘルニアと考えられたものが、単に水たまり(水腫)であったり、リンパの腫大であったりすることもありますので、鼠径ヘルニアを診断する上で、画像検査は必須だと考えます。
鼠径ヘルニアのCT検査
CT検査では、詳細な形態画像を得ることができ、これを元に放射線読影医による診断が可能です。鼠径部の表層だけでなく、骨盤内の深部も描出が可能であるため、鼠径部ヘルニア以外に骨盤内の多くの情報を得ることができます。
非常に優れた検査方法ですが、放射線被爆があり、超音波検査より費用は高額となりますので、その点はデメリットとなります。
鼠径ヘルニアと同じような症状を呈する病気について
では、なぜ身体所見だけでも多くの患者様で診断がつくのに、画像検査(当院では超音波検査)を行う施設が多いのか、詳しく説明します。
以下の病気では、鼠径部の膨らみやしこり、痛みなどを来たすことがあります。
① 鼠径部ヘルニア(内鼠径ヘルニア、外鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア)
② リンパ節腫大(反応性、炎症性、腫瘍性など)
③ 表皮嚢腫(アテローム)
④ 鼠径管内水腫(Nuck管水腫、精索水腫)
⑤ 子宮内膜症
⑥ 停留精巣、精巣上体嚢胞
⑦ 腫瘍性病変(鼠径管内の平滑筋腫など)
⑧ 精索静脈瘤、子宮円索静脈瘤
⑨ 術後血腫、漿液腫、再発
⑩ その他(恥骨炎や股関節疾患など)
参考文献:Margarita V.Revzi et al, US of the Inguinal Canal: Comprehensive Review of Pathologic Processes with CT and MR Imaging Correlation. Radiographics. 2016.
上記の通り、鼠径ヘルニアと同じような症状でも、様々な病気の可能性があります。稀な疾患もありますので、超音波検査だけでは診断がつかない場合は、CT検査を併用して診断を行う必要があります。
私自身、これまで多くの患者様を診察させて頂き、上記ほとんどの症例を経験させて頂きました。中でも印象的なのは、「鼠径部の膨らみ、しこり」の症状で超音波検査を実施し、リンパ節の腫大を認め、その後のCT検査で「膀胱がん」や、「悪性リンパ腫」と診断された方々です。
このような経験をすると、「鼠径部の症状が、全身疾患の初発症状になる」ということを実感します。外科医として鼠径ヘルニアを専門に診療していますが、鼠径部の症状から、悪性度の高い全身の疾患が見つかることがある、ということは常に念頭に置きながら診療すべきと心がけています。
まとめ|鼠径ヘルニアの診断と検査方法について
最後までお読みいただきありがとうございます。
鼠径ヘルニアは足の付け根の症状ですから、「恥ずかしい」という気持ちや、「どこの病院に行ったらよいかわからない」という方も多くおられるため、そのまま放置される方も少なくありません。
鼠径部の膨らみやしこりであっても、鼠径ヘルニア以外の病気である可能性もあります。鼠径部に何か症状のある方は、早めに医療機関を受診ください。
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