滋賀大津そけいヘルニア外科クリニック|脱腸を日帰り手術で治療
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鼠径ヘルニアを治療せず放置するとどうなる?手術のタイミングは?

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いつも滋賀大津そけいヘルニア外科クリニックのブログをご覧頂きありがとうございます。

当院は鼠径部ヘルニア日帰り手術の専門クリニックですが、今回は「鼠径ヘルニアを治療せずに放置しておくとどうなるのか?手術のタイミングは?」というテーマで、解説していきたいと思います。

鼠径ヘルニアとは

鼠径ヘルニアとは、「足の付け根(鼠径部)の筋肉や筋膜が弱くなることにより、腸や脂肪などの内臓脂肪が皮膚の下まで押し出されてくる病気」です。

鼠径ヘルニアの大きな原因は加齢であり、年を重ねるにつれて鼠径部の組織(筋肉や筋膜)自体が弱くなるため、鼠径ヘルニアを発症してしまいます。

鼠径ヘルニアは治療しないと治らない

鼠径ヘルニアの原因が、「加齢による鼠径部組織の脆弱化」であることから、この問題を克服しない限り、鼠径ヘルニアは治りません。現在の医学では、手術が唯一の治療法であり、薬やリハビリ、筋肉トレーニングで治ることはありません。

ヘルニアバンドを装着することで表面上の膨らみは抑えることはできますが、残念ながら根本的な治療にはなりません。

発症早期は、鼠径部の違和感や膨らみだけなので放置する方が多い

鼠径ヘルニアの初期症状としては、「鼠径部の違和感や膨らみ」が挙げられます。

鼠径部の膨らみに関しては、横になったり、手でゆっくり押さえたりすると引っ込みます。また、夕方だけしか症状がない、という方もおられます。

皆さま気になる症状ではあるものの、日常生活を送ることはできますし、足の付け根の症状ですから、「恥ずかしい」という気持ちや、「どこの病院に行ったらよいかわからない」という方も多くおられるため、そのまま放置される方も少なくありません。

鼠径ヘルニアは放置すると確実に大きくなる

一方で、鼠径ヘルニアは加齢が大きな原因で、鼠径部の筋肉や筋膜が弱くなっているため、放置することでさらに組織は弱くなり、押し出される腸や脂肪の量も多くなります。

つまり鼠径ヘルニアを放置すると、個人差はあるものの確実に大きくなりますし、違和感や痛みなどの症状が強くなることもなります。

鼠径ヘルニアを放置すると、突然、急激な痛みを起こすこともある

鼠径ヘルニアで問題となるのは大きく分けて二つです。
一つは鼠径ヘルニアによる「膨らみや痛みなどの症状」であり、もう一つは鼠径ヘルニアの「嵌頓(かんとん)」です。

鼠径ヘルニアの嵌頓については、別のブログに詳しく記載しておりますので、詳細は(https://shiga-sokei.net/kanton/)をご参照下さい。嵌頓とは、ヘルニアとして押し出された腸がおなかの中に戻らなくなり危険な状態を来すことです。

鼠径ヘルニアの嵌頓が起こると、鼠径部の膨らみは硬くなり、押しても戻らなくなります。腸の中の食べ物が流れなくなり、「腸閉塞」の状態になると、腹痛や嘔吐などの症状が現れます。
また、嵌頓により腸への血の流れがなくなると、腸が腐り(腸壊死)、腹膜炎という非常に危険な状態になります。

腹膜炎では緊急手術によって、腐った腸を切除し、汚染されたおなかの中を洗浄する必要があり、術後も厳重な管理体制で入院治療が必要となります。

鼠径ヘルニア手術のタイミングは?

鼠径ヘルニアの症状改善や嵌頓予防のために「鼠径ヘルニアに対する治療は早期治療が基本」です。

一方で、欧米の研究にはなりますが、鼠径ヘルニアに対して手術をすぐに行った群と、手術なしで経過観察した群で、鼠径ヘルニアの長期経過を比較検討した研究がいくつかあります。その中の論文では、手術なしで経過観察した患者様の約1/4が、2年以内に鼠径ヘルニアの症状が増悪し手術を受けられましたが、嵌頓により緊急手術となった患者様の割合は1%以下と極めて低い確率でした。
また、追加で手術を受けられた患者様の経過は良好で、命に関わることはありませんでした。

このように海外での報告ではありますが「鼠径ヘルニアと診断されても手術をすぐに行わず経過観察し、症状が悪化した時に手術をする」という治療方針も選択肢の一つであると考えられます。

やはりお仕事やご家庭の事情で、どうしてもすぐに手術を受けられない方はおられます。その場合、鼠径ヘルニアであることしっかりご説明し、症状や嵌頓のリスクをご理解頂いた上で経過をみる、という選択肢を外科医としてご提示すべきだと考えます。

鼠径ヘルニアがあれば嵌頓するから、何が何でも明日・明後日にでも手術を受けなさい、ということはありません。ただし、鼠径ヘルニアの嵌頓の既往がある患者様(鼠経ヘルニアの嵌頓を起こし、病院で整復された方)や、女性の鼠径部ヘルニア(特に大腿ヘルニア)の患者様は、嵌頓するリスクが比較的高くなりますので、できる限り早期の手術をお勧めします。


いかがでしたでしょうか?

鼠径ヘルニアは、手術しか治療法はありません。また、放置することで鼠径部の膨らみは確実に大きくなりますし、常に嵌頓のリスクを考えて生活する必要がありますので、基本的には早期治療が望ましいと考えます。

一方で、エビデンスに基づいた医療として、患者様の一人一人に合わせた柔軟性のある治療計画を立てることも我々外科医の務めだと考えます。鼠径部に何かご不安のある方は、気軽に当院を受診ください。

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著者情報

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安川 大貴
滋賀大津そけいヘルニア外科クリニック 院長
日本外科学会 外科専門医、日本消化器外科学会 消化器外科専門医

「患者さまに寄り添った温かい医療」を信念に、2023年4月に滋賀県初の鼠径ヘルニア日帰り手術クリニックを開院。

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