股関節のしこりは病気？考えられる原因と受診の目安を解説

滋賀県大津市の鼠径ヘルニア専門クリニック「滋賀大津そけいヘルニア外科クリニック」です。当院では、体に優しい腹腔鏡を用いた日帰り手術で鼠径ヘルニアの治療を行っています。

股関節の周囲にしこりを見つけると、「病気ではないか」と不安に感じる方も少なくありません。股関節は、皮膚・脂肪・リンパ節・筋膜・血管・腸管など多くの組織が集まる部位であるため、しこりの原因は幅広く、良性の皮膚疾患から、治療が必要となる鼠径ヘルニア（脱腸）までさまざまです。

本記事では、股関節にしこりができる主な原因や代表的な病気、受診の目安などについて解説します。

股関節にしこりができる原因とは

股関節は太ももの付け根に位置し、皮膚・脂肪・リンパ節・血管・腸管・筋膜など複数の組織が入り組んでいるため、しこりの原因は多岐にわたります。

代表的な原因としては、鼠径ヘルニア（いわゆる脱腸）、リンパ節の腫れ（リンパ節炎）、皮下にできる良性腫瘍（脂肪腫・粉瘤）などが挙げられます。また、股関節周囲は汗がこもりやすく摩擦の多い部位であるため、皮膚トラブルや炎症が起こりやすく、赤みや痛みを伴うしこりがみられることもあります。

このように、股関節にできるしこりの原因には、良性のものから手術が必要になる疾患まで幅広い可能性があります。しこりが大きくなってきた、痛みが続くなどの症状がみられる場合には、一度医療機関を受診して適切な診断を受けることが大切です。

股関節のしこりを症状とする病気

股関節の周囲にできるしこりは、原因となる病気によって特徴や治療法が大きく異なります。自然に改善する良性のものから、治療が必要になる病気までさまざまです。見た目や触った感触だけでは判断が難しいことも多いため、注意が必要です。

ここでは、股関節周囲のしこりとしてよくみられる代表的な病気を紹介します。

鼠径ヘルニア（脱腸）

腸などの腹腔内の臓器が、鼠径部の筋膜のすき間から押し出されることで、ふくらみ（しこり）が生じます。このふくらみは「立つと大きくなる」「横になると小さくなる」といった特徴があります。進行すると痛みや違和感が強くなり、さらに「嵌頓（かんとん）」を起こすと腸の血流が途絶え、緊急手術が必要になる場合があります。

リンパ節炎・リンパ節腫脹

股関節周囲にはリンパ節が集まっており、感染症・皮膚の炎症などによって腫れてしこりとして触れます。風邪・けが・皮膚の感染などをきっかけにリンパ節が反応することが多く、押すと痛みを伴うのが一般的です。多くは数日から数週間で改善しますが、しこりが硬い・長期間消えない・発熱を伴う場合は他の疾患（悪性リンパ腫など）との鑑別が必要です。

脂肪腫

皮下脂肪が増殖してできる良性腫瘍で、柔らかく、ゆっくり大きくなるのが特徴です。痛みはほとんどありませんが、大きくなると生活に支障が出ることがあります。治療は手術での摘出が一般的です。

粉瘤（アテローム）

粉瘤は皮膚の下に角質や皮脂がたまることでできる良性腫瘍で、中央に黒い点（皮脂の出口）が見られることがあります。炎症が起きると赤く腫れ、痛みや熱感を伴います。自然に治ることは難しく、根治には手術での摘出が必要です。

皮膚の炎症・感染症

股関節周囲は汗や摩擦が多く、毛嚢炎・膿皮症・かぶれなどの皮膚炎が起こりやすい部位です。これらは赤みや痛みを伴うしこりとして自覚されることがあり、細菌感染が進行すると膿がたまることもあります。多くの場合、抗生剤の内服や外用薬によって改善が期待できます。

悪性腫瘍

股関節にできるしこりの多くは良性ですが、まれに悪性腫瘍（軟部肉腫など）が原因となることがあります。急速に大きくなる、硬く動きにくい、痛みが強い、数週間経っても改善しないといった特徴がある場合には早めの精査が必要です。

股関節のしこりは何科を受診すべき？

股関節にしこりができた場合、原因によって受診すべき診療科が異なります。以下に、代表的な症状と適した診療科をまとめます。

立つと大きくなり、横になると小さくなるしこり

診療科：外科・消化器外科・一般外科

※鼠径ヘルニアが疑われます。

押すと痛みがある／風邪やけがのあとに腫れてきたしこり

診療科：内科・皮膚科

※リンパ節炎の可能性があります。

柔らかく、ゆっくり大きくなるしこり

診療科：皮膚科・形成外科

※脂肪腫が考えられます。

中央に黒い点があり、炎症を繰り返すしこり

診療科：皮膚科・形成外科

※粉瘤（アテローム）の可能性があります。

赤み・熱感・腫れを伴う痛いしこり

診療科：皮膚科

※毛嚢炎や膿皮症などの皮膚炎・感染症が疑われます。

短期間で急速に大きくなる／硬く動きにくいしこり

診療科：整形外科・腫瘍専門医

※まれに悪性腫瘍（軟部肉腫など）が原因のことがあります。

代表的な病気「鼠径ヘルニア」について

股関節のしこりを主症状とする病気の中でも、代表的なものが「鼠径ヘルニア」です。鼠径ヘルニアとは、足の付け根にあたる鼠径部から腸や腹膜などの腹腔内の臓器が飛び出す病気で、一般的には「脱腸」と呼ばれています。

成人における発症の主な原因は、加齢や筋力低下により鼠径部の筋肉や筋膜が弱くなることです。また、鼠径部の解剖学的構造の違いから女性より男性に多く、とくに中高年の男性に発症しやすい傾向があります。

代表的な症状として、鼠径部にやわらかいしこり（膨らみ）が生じることが挙げられます。この膨らみは、立位のときや咳、くしゃみ、重い物を持つ動作など腹圧がかかる場面で大きくなりやすく、一方で仰向けに寝る、あるいは軽く押すことで引っ込むことが多い点が特徴です。

鼠径ヘルニアは自然に治ることはなく、根本的な治療には手術が必要です。放置すると症状が進行し、日常生活に支障をきたすだけでなく、「嵌頓」と呼ばれる腸閉塞や腸壊死につながる重篤な合併症を引き起こすおそれがあるため、早期診断・早期治療が重要です。

まとめ

股関節は太ももの付け根に位置し、皮膚・脂肪・リンパ節・血管・腸管・筋膜など複数の組織が入り組んでいるため、しこりの原因は多岐にわたります。鼠径ヘルニアのような外科的疾患をはじめ、皮膚科・形成外科・整形外科領域の病気など、さまざまな要因で発生することがあります。

中には、鼠径ヘルニアのように放置すると重篤な合併症につながる病気もあるため注意が必要です。しこりをはじめ、気になる症状がある場合は、早めに専門医を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

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